研究概要 |
ヒトβ-グロビン遺伝子の正確な転写開始に関与する蛋白因子を分離・精製するため、我々はHeLa細胞抽出液のカラム・クロマトグラフィーを行なった。フォスフォセルローズカラムで0.25MKClの1.0MNaClの間で溶出する分画(Fr.2)は正確な転写に対する活性をもっていた。上と同じカラムで0.1MKClで通過し、DEAE-セルローズカラムで0.1MKClと0.5MNaClの間で溶出する分画(Fr.1)をFr.2に加えると、活性は非常に上昇した。DEAE-HPLCカラム上、Fr.2は0.1MNaClを通過する分画、0.21M及び0.26MNaClで溶出する分画、合計3つの分画に分かれた。さらにに各分画をそれぞれHPLCゲル濾過にかけ、第1及び第3の分画はそれぞれ2つの分画に分かれた。これら5つの分画(A,B,C,D及びE分画)はそれぞれ52,000、540,000、285,000、700,000及び185,000の分子量領域に活性をもち、お互いに特異的な蛋白であることを示唆している。もし忠実な転写がこれら5つの分画と再合成される時、DEAE-HPLCカラムでさらに精製されたFr.1は転写活性に対して必須となった。以上の結果によりRNAポリメレース【II】に加えて6つの分画がヒトβ-グロビン遺伝子の正確な転写に必要なことが示唆される。 これらの分画はいずれもSDS電気泳動上多数のバンドからなっている。量的にも少ないため完全精製は困難であろう。転写開始に必要な蛋白因子の機能を明らかにするため、またそのクローニングに必要な情報を得るため、各因子に対するモノクロナール抗体の作製を試みる。抗原が均一でないのでスクリーニングを多数しなければならないことが予想される。アッセイ法は簡単で感度が良いものでなければならぬので、現在Gのない合成DNAを持つ鋳型を作製中である。
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