研究概要 |
ラットの小腸・脈管同時還流法を用いて、セファレキシン、セフラジンおよびアンピシリンの消化管吸収をみた結果、前2者(セファロスポリン)はアンピシリンに較べて速かに脈管系(血液側)へ移行することを認めた。従って、これまで管腔内消失などのみかけの吸収から言われてきたこれらの薬物の吸収性の差異を、今回実際に脈管系への移行を測定することによって確認し得た。さらに、薬物間相互の吸収抑制実験を、20倍濃度の共存下にて行った。その結果、セファレキシン、セフラジンの脈管系への移行は相互に抑制を受けること、および、シクラシリンの共存によっても両者ともに強く抑制を受けることを認めた。このことにより、これら両性イオン型β-ラクタム抗生物質の吸収機構には、それぞれ共通する輸送系の存在している可能性が強く示唆された。 次いで、アミノ酸(L-ヒスチジン,L-フェニルアラニン)あるいはジペプチド(グリシルグリシン,L-フェニルアラニルグリシン,カルノシン)による吸収抑制実験を行った。その結果、40倍濃度の共存でいずれも、セファレキシン,セフラジンの脈管系への移行を抑制する傾向を示したが、その程度は先の薬物間で認められた結果に較べて小さかった。」一方、アミノ酸の間における吸収抑制の実験では、20倍量のL-メチオニンの共存によってL-フェニルアラニンの管腔内からの消失および脈管系への移行ともに強く抑制されることを認めた。 これらの実験結果より、両性イオン型β-ラクタム抗生物質の小腸からの吸収機構には、アミノ酸やジペプチド類の輸送系が寄与している程度は強くはなく、主に、これらとは異なる薬物に特異的な系が関与している可能性が高いものと推擦される。
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