研究概要 |
NFR(非癒合反応)活性のバイオ・アッセイの開発について:個虫を含まない群体断片を試料液中で培養する方法を検討した. この方法により,検体(群体断片)が群体抽出液・体液に対してNFR様の反応を示すことが観察された. 更に,本法は液水で10倍希釈した試料の活性を充分に検出できる感度を持っており,精度も從来のアッセイ法より高い. ただし,多量の試料液を必要とする. このアッセイ法を用いて,NFR活性の特性を調べたところ,凍結・透析によって活性が失なわれない点で,從来のアッセイ法と同で結果をえたが,加熱によっても失活しなかった点で違っている. 電気泳動パターンからの種内変異の解析:癒合関係のわかっている群体を材料に2次元電気泳動のパターンを比較し,数種の種内変異を示す蛋白質を検出したが,いずれも癒合性と対応した変異ではなかった. このうち,一種の蛋白について抗血清を作製し,免疫学的比較を試みたが,有意な差は認められなかった. 新しいタイプの群体特異性:Botrylloides〓の群体ホヤ2種について自己ー非自己認識の発現について調べたところ,この2種は群体の切断面では自己ー非自己認識を行わず,群体の生長端では自己ー非自己認識を行うことがわかった. これは今までに報告のない,新しいタイプの群体特異性である. 生長端にみられるNFRは被嚢表面に限定してみられ,自己ー非自己認識を行う場が被嚢に局在することを示している. このことから,被嚢細胞(tunic cell)が自己ー非自己認識を行なっていることが予想される.
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