昭和63年度は、次の二点をメインテーマとして研究を行い、得られた新たな知見と成果は以下の通りである。 1.殺菌工程が不要な純粋培養法の開発 昭和61年度および62年度の研究により開発された、油溶性の食品保存料や殺菌剤に対する防御機能を有するバイオリアクターの能力アップを計ることを目的として検討を行った。まず、植物油を乳化混入したゲルビーズの油溶性物質に対する防御機能は、用いる油溶性物質の植物油と水に対する分配係数により支配され、その分配係数が大きいほど防御機能が大きいことを明らかにした。この結果に基づいて、防御機能の能力アップは植物油への分配率が大きい油溶性薬剤の選択とその使用によって行われた。その結果、先に用いたパラオキン安息香酸ブチルの約3倍の分配係数を有する、フェノール系抗菌物質であるプリベントールGDを選択した。6〜20%のひまし油を乳化混入し、酵母を固定化したバイオリアクター(アルギン酸ゲルビーズ)を用い、殺菌工程を経ていない培地を含むフラスコに、プリベントールGDを0.1%添加し、酵母によるアルコール醗酵のくり返えし回分培養を行った。その結果、約35時間で4回のくり返えし回分培養を雑菌汚染なしに行えることができた。 2.殺菌および除菌工程が不要な純粋培養法の開発 殺菌および除菌工程を省いたジャーファーメンター培養にて、0.1%プリベントールGD存在下で、酵母によるアルコール醗酵の連続培養を行った。その結果、希釈率0.1(hr^<-1>)で、約140時間正常に定常状態を維持することができ、しかも、その間、雑菌の汚染は全く認められず、長期の純粋培養に成功することができた。
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