研究概要 |
申請者らにより開発された花粉培養系を用い、タバコ花粉が不定胚性細胞へと変化する機構を生理・生化学的に解析した。 二核期中期の未成熟花粉に飢餓処理を施すと不定胚性細胞へと変化するが、この過程においてのみ特徴的に見られる生化学的変化をアミノ酸類,蛋白質の合成およびリン酸化の三点について検討した。 飢餓処理により、アミノ酸類,ヌクレオチド類の組成および蛋白質合成速度に変化が認められた。 しかし、飢餓処理により不定胚性細胞へと変化しない二核期中期以外の未成熟花粉を用いた場合にも同様の変化がみられたことから、この変化は不定胚性細胞へと変化する時にのみ特徴的な変化ではなく、飢餓処理に対する一般的反応と結論した。 次いで、飢餓処理により誘起される合成蛋白質パターンの変動についても検討したが、不定胚性細胞へと変化する過程に特徴的な変化は認められなかった。そこで、環境変化の細胞内伝達機構や細胞の機能発現に重要な機能を果たすことが示されつつある蛋白質のリン酸化について検討した。 〔【^(32)P】〕無機リン酸を培養花粉に取り込ませ、不定胚性細胞へと変化する過程で特異的にリン酸化される蛋白質のパターン変動を二次元電気泳動法を用い検討した。 その結果、飢餓処理により二核期中期の未成熟花粉が不定胚性細胞へと変化する過程でのみ特異的にリン酸化される六種の蛋白質が検出された。 一方、飢餓処理を施さない場合、二核期中期の未成熟花粉は正常花粉として成熟するが、この過程では前述のものとは異なる五〜六種のリン酸化される蛋白質が検出された。 このような蛋白質リン酸化のパターンは、タバコばかりでなくマルバタバコでも認められた。 来年度は、リン酸化される蛋白質の局在化とリン酸化の調節因子について検討する予定である。
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