研究概要 |
各種のN-カルボキシα-アミノ酸無水物を合成し、その中から5種類以上を組合せて共重合を行い、高分子量多元共重合ポリペプチドを合成した。構成するアミノ酸およびその保護体として、グルタミン酸(Glu),アスパラギン酸(Asp),リジン(Lys)およびそのベンジルエステル(OBz)およびカルボベンゾキシ誘導体(Z),およびアラニン(Ala),フェニルアラニン(Phe)およびチロシン(Tyr),プロリン(Pro),トリプトファン(Trp)等である。それらの構成比は、本研究の目的が酸性および塩基性タンパク質のモデルとなる機能性ポリペプチドで非プロトン性有機溶媒にも溶解性の高いものの合成であることから、Glu,Asp,Lys,の成分が1/3モル以上含まれるように配慮した。それ以下の場合は溶解性が低下する場合が多い。また、1/3以上の場合であっても構成アミノ酸のごく一部異るとその性質にかなり変化が認められた。特に、Pro,Trpの場合特にその傾向が著しかった。例えばOBzlASP,ZOrn,Leuが各27%,Phe13%,Pro6%の5元共重合ポリペプチドはジクロルエタン(DCE),に良く溶解するが、Proが含まれないものは溶解性が悪い。また、OBzlAsp,Ala,Phe,Leuが各24%,Trp4%のものはDCE溶液としてコロイド溶液であるがTrpの代りにProを導入したものは溶解性が著しく良い。このように含有する僅かなアミノ酸の変化によって溶解性が変化することは、5種類のアミノ酸がある程度規則的に重縮合していることを示唆する。よって、これらのポリペプチドの、一次,二次構造について赤外吸收スペクトル、旋光分散等を用いて詳しく解析する予定である。 アミノ酸残基の保護基を除去する方法として、臭化水素-酢酸がよく用いられるが、この場合、ペプチド主鎖の切断による分子量の低下がおこる場合があり、これを起さない接触還元法で行なうこのについても検討している。
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