研究概要 |
蛋白質の機能を理解するにはその高次構造を知ることが重要である。 近年の遺伝子操作技術の発達によって、多数の蛋白質の一次構造、即ちアミノ酸配列が明らかにされ、さらにその一次構造上の特定のアミノ酸を置換した蛋白質をも容易に得ることが出来るようになった。 一方、実験的に高次構造を決める方法としてX線結晶構造解析とNMR測定データに基いた特定残基間距離束縛条件下のランダムな構造変化による合理的高次構造探索法があるが、前者は蛋白質結晶とその重原子同型置換体が得られなければ不可能であり、後者は良質な構造を多数構築してその中から探索するので計算費用が莫大なものとなり、NMRデータの測定限界もあってあまり大きな蛋白質には適用できない。 長野らはこれまでにX線結晶構造解析された蛋白質の一次構造と高次構造の間の統計的分析に基く経験法則に従って丸善社製の蛋白質核酸用HGS精密分子構造模型を用いて何通りかの合理的な高次構造の部分構造を組立て、マクドネルダグラス社製の磁気的原子座標測定装置3SPACE digitizerを用いて原子座標を測定し、マイクロコンピュータのディスケットに記録し、次いで電話線を介して東大大型計算機センターのファイルに転送する。それらを全体として合理的になるようにまとめ上げ、ダイキン工業社製の三次元カラー・コンピュータ・グラフィックス端末を用いて立体的に表示しながら、原子座標の精密化を行えるようにした。現在、B型肝炎ウィルスの直径220【A!°】の小型球型粒子のコート蛋白質の最も合理的な高次構造のモデルを構築し、計算中である。 三次元コンピュータ・グラフィックス装置による蛋白質構造の表示については、【C_α】原子を用いた模式的表現や様々な物理的化学的性質(熱振動因子,疎水性・親水性,酸性・塩基性,特殊サイトなど)によるアミノ酸残基の色分け表示やアミノ酸残基の変換などができるプログラムを開発済である。
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