研究概要 |
活性エステルあるいは酸クロリド法でアゾ芳香族色素をカチオン性のアミノ酸であるリシン(あるいはその低級同族体)およびアルギニンに共有結合させ,種々の良好な可逆光応答性を示す(i)アミノ酸誘導体,(ii)オリゴペプチド誘導体,(iii)ポリペプチド誘導体を合成した. 試料溶液への光照射は干渉フィルター使用下に水銀ランプを用い紫外光(360nm)あるいは可視光(460nm)を照射した. 照射光の波長により色素のアゾ基が可逆的にトランス+ュSY.dblharw.+ャシス光異性化し,それに伴う分光学的な物性あるいは物理定数の変化を光応答性材料の系に利用する目的で以下の研究を行った. アゾ色素系の光化学研究の難点の一つは目的の化合物の溶解度の低さのため使用可能な溶媒が限定されることにある. この溶解度の問題をペプチド鎖の鎖長と溶媒・溶質のダイポールモーメントの検討から一つの解法を導びき,アゾ芳香族アミノ酸アミノ酸類の光センサー機能として成果をまとめた(投稿中). 一般にアゾ芳香族含有ペプチドはそのペプチド部分の重合度に無関係に光照射によりアゾ基が光異性し,アゾ芳香族基の電子状態が変化し,吸収スペクトルと円偏光二色性スペクトルが大きく変化する. この極めて速い電子構造の変化を反映して,特徴的に可視部波長領域で円偏光二色性スペクトルが可逆変化するので,この現象を光応答機能材料として利用すべく知見を集積した. 従来,αーヘリックス骨格構造のアニオン活ポリアミノ酸の光化学が多枝にわたり研究されてきたが,多数の関連分子構造化合物を得やすい点と多様な可逆光応挙動の組み合われの結果,リシンに代表させるカチオン性のアミノ酸,ペプチド,ポリペプチド一色素系の光化学は光検知あるいは光センサーの系として有望であることが一連の研究から判明した. 研究成果の一部を国内の学会に口頭で,また外国専門雑誌に論文として二報発表した.
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