本年度は昨年度より進めていた港湾発展史のためのデータベースを充実させた。データベースはカードイメージで作成されており、以下のような特徴を備えている。(1)カード記入時に一つ前のカードのリピート機能を定義した情報のデータはそのまま表示できる。これにより同一内容を入力する場合はキー操作一つでおこなえる。(2)数値情報を自由に演算させて出力出来るので、統計的な検討がたやすい。(3)カード検索を素早く行えるように索引簿をマスターカード一枚につき7種類まで設定できる。(4)記入、多重検索、印刷処理に必要な種々の指定を「手順書」の形式で指定できる。 このようなデータベースを作成し、大阪、神戸、横浜について明治期以降の港湾施設の設計・施工データ、入出港船舶データ、輸移入・輸移出貨物データを入力し、これによって、港湾技術の進歩と港湾の占める社会・経済的役について考察した。得られた主要な結果は、(1)戦前は5百トン以下の船舶が大部分だったが、戦後は1万t以上の船舶が急増し、昭和21年〜41年の20年間に平均船型は2倍、昭和41年〜61年の20年間に3倍に伸びており、戦後の日本の造船技術の進歩がわかる。同時に、40年代からの輸送経済効率が船型の増大で著しく上昇したことがわかった。(2)船型の大型化の波は昭和30年代後半に第一次、昭和50年代に第二次が見られる。(3)係船施設は明治・大正期は脚柱式が主体で水深も8m以下であるが、昭和5年以降は矢板式岸壁が主流となり、水深9m級が施工可能となった。昭和35年以降になると水深10〜12m級の岸壁が多く建設されているがほとんど脚柱式で、重力式岸壁は水深8m程度では建設可能となっている。(4)防波堤は明治期は全て捨石堤であったが、昭和に入り混成堤が主流となり鉄筋コンクリート技術の開発が反映されている。以上の他、種々の考察が行われたが割愛する。
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