研究概要 |
京都大学原子炉実験所の研究炉に付置されたオンライン同位体分離装置を使用し、本科研費によって購入された新型超高温熱イオン源、大型Si(Li)半導体検出器、データ解析処理装置等を用いて主に重い核分裂生成核種領域の研究を行った。 特に希土類核種領域において【^(155)Nd】,【^(156)Pm】の2つの新同位元素を発見したほか、未発見の【^(153)Pr】,【^(156)Nd】等についても予備的なデータを得た。この方面の研究では更に高性能のイオン源を用いることにより、【^(156-158)Nd】,【^(157-159)Pm】等核分裂収率が少く未だ見出されていない中性子過剰核種を見出せる可能性が大きい。 一方、未だ崩壊図式が殆んど確定されていない【^(143)La】(【Ty_2】=14分),【^(145)Ce】(【Tー(1/2)】=3分),【^(147)Ba】(【Ty_2】=0.7秒),【^(147)La】(【Tー(1/2)】=4秒),【^(147)Ce】(【Tー(1/2)】=56秒)等の短寿命中性子過剰核について、γ線のエネルギー,強度,同時計数関係,内部変換電子の変換係数等に関する精密な測定を行い、多くの新しいγ遷移核準位等を見出し、γ遷移の多重度を決定し、これらの核の崩壊図式を決定した。特に【^(147)Ba】,【^(147)La】及び【^(147)Ce】の崩壊によって調べられる娘核はそれぞれ中性子数90,89,88であって、核の変形が起る領域であり、非常に興味がある。目下データ解析中であり、近く核構造論的結論が導ける予定である。 又これ迄殆んど未測定のこれらの核のβ崩壊のQ値(Qβ値)の測定や半減期の精密測定を行っている。これらの諸研究は猶今後引続いて行われる予定であり、今回の研究費は新同位元素の発見を含むこれらの多くの研究に永く貢献することは確実である。 猶計画されていたβ崩壊の強度関数に関する測定及び磁気能率に関する測定は、今年度においては時間の関係で行えなかったが、来年度以降にその測定を予定している。
|