研究概要 |
(1)三種ペプチド共存システムの同定 ラット脚傍核を用いて行った. 脚傍核のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)含有細胞を含み扁桃体中心核に投射することは既に我々が報告してきた. 今回我々は脚傍核より扁桃体中心核に投射するサブスタンスP(SP)ややニューロテンシン(NT)含有細胞の存在を証明し, かつCGRP, SP, NTを含有する細胞が存在することを明らかとした. 即ち脚傍核においてSP, NT細胞を同定し, 脚傍核を破壊すると扁桃体中心核のSP, NTは激減する. さらに扁桃体中心核に逆行性トレーサを注入すると脚傍核においてトレーサとSP抗体, 或いはNT抗体で同時に標識される細胞が出現した. 次にCGRPとSP, NTとSPの二重染色を施行するとこの両者を各々含在する細胞が認められた. さらにCGRPとSPを二重染色し共存細胞を同定後, 連続切断でNTとの共存を検討した結果この三者を同時に含む細胞が同定された. 従来より二種の神経活性物質の共存について多数その例が集められているが三種の異なるペプチドの共存例についての報告はなくこの例が最初である. 最近アミンと2種のペプチド或いはアミノ酸, アミンペプチドなどの三者共存例も示されており, 三種以上の活性物質が同一細胞に共存することが普偏的なものと考えうるデータを今回得られた. (2)共存のメカニズムの検討 神経活性物質の共存のメカニズムの検討の為それらのmRNAの可視化を試みた. 例としてエンケファリンとSPを用いた. In situ hybrization法により扁桃体のエンケファリンのmRNAが胎生の早期より多量に産生されること, また後根神経節のSPのmRNAが痛み刺激により増加することを見い出した. この方法の開発により今後SP, エンケファリン共在細胞においてそのメカニズムの解析への道を開いた.
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