(1)後根神経節のサブスタンスP(SP)及びカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の意義について 昭和62年度、我々は痛覚モデル動物を用い、同動物後根神経節SPの前駆体mRNAが増加していることを見い出しSPが侵害刺激に関与していることを証明した。本年度はSPと同一細胞内に共存するCGRPについて検討を加えたがSPほどの変化は認められず、CGRPは侵害刺激に関与するにしてもSPほど緊密な関連は有しないものと思われる。またラットにおいて後根神経節細胞の中枢枝を切断してもSP及びCGRPの前駆体mRNAには変化が認められなかったが知覚を受容しその情報を中枢に伝える末梢枝を切断するとSP、CGRPの前駆体mRNAは著減した。このことは知覚神経節ニューロンの神経ペプチド動態は末梢枝の情報により大きな影響を受けていることを示す。 (2)リセプター局在について βアドレノリセプタ(AdR)の脳内分布を免疫組織化学を用いて検討した。AdRは脳内に幅広く分布し主として細胞体、樹状突起に反応物が現られる。下垂体でもAdR陽性細胞が存在するがACTH抗体との二重染色によりACTH細胞がAdRを有することが明らかとなりACTH分泌にAdRを介するカテコルアミン調節が存在することが証明された。また視床下部ではバゾプレッシンを分泌する室傍核及び視索上核にAdR反応があり、二重染色によりAdRはバゾプレッシン分泌細胞に存在することがわかる。更に我々はカテコールアミンの合成酵素との二重染色、及び免疫電顕によりAdRを含有するカテコールアミン軸索終末が存在することを見い出し、オートリセプターの存在を証明した。現在GABA_Aリセプターのα_2サブユニットの合成プローブを作成し遺伝子発現を検索中でプルキニエ細胞等が強い遺伝子発現を示す。
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