研究概要 |
人工弁の構造改善による耐久性の向上を目的として各種人工弁の人工心臓弁位における水撃現象の比較検討を行った。広島大学で作製した一回拍出量が140mlの空気駆動式ダイアフラム型人工心臓を用いて、流入側に比較する各種人工弁を挿入し、人工弁の流入及び流出側に先端圧測定用トランスデューサーを設置し、ドノバン型体外模擬循環回路を用いて、人工心臓を駆動した。差動増幅器を用いて、人工弁の上流及び下流側の圧力値並びにその圧力差を直接求め、動脈圧,心房圧,駆動圧,流量等の駆動条件とともにポリグラフに同時に記録した。実施した人工弁の種類はBj【o!¨】rk-Shiley弁(BS),Bj【c!¨】rk-Shiley mono-strut弁(BSMS),Medtronic-Hall弁(MH),St.Jude Medical弁(SJM),Starr-Edwards ball弁(SE)で、それぞれ弁閉鎖時に水撃による圧力変動が観察された。弁の破損に関与する力は弁前後の圧較差の最大値(Maximum Pressure gradient;MPG)で表わされる。記録されたMPGはSJMが最も低く、BS,SE,BSMS,MHの順で高くなり、MHが最大であった。同じ人工弁でも駆動条件によってMPGが異なり、%systoleを増加していった場合、完全に拡張する前に収縮期が開始する条件のときに急に大きくなり、それより大きな%systoleではほぼ一定値になることがわかった。心拍出量を一定として比較した場合、SJMが低いMPGを示し、水撃による圧力上昇の小さい形態の弁であることがわかった。弁disc保持部位がmono-strut方式のMH,BSMSは弁の強度そのものは大きく、この点についての耐久性が増大していると思われるが、計測された水撃によるMPGも大きかった。現在、更にSJMにみられた水撃緩和のメカニズムの究明と、この弁の耐久性との関係並びに各種人工弁の耐久性を損なわない駆動方式の解析を行っている。
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