研究概要 |
人工心臓駆動中におこる人工弁破損の原因の一つとして,人工弁が閉鎖する際の水撃現象による異常高圧の影影が考えられる. そこで既存の各種人工弁の人工心臓弁位における水撃現象の比較検討を行い,St. Jude Medical 弁が水撃による圧力上昇の比較的小さい弁であることがわかった. 現在この弁の耐久試験を施行している. 研究の過程において, この水撃を緩和する機構の考察を行い,血液ポンプ本体の構造改良による水撃緩和の可能性を追及し, 水撃を緩和するような人工弁固定モデルを作製して,その基礎実験を行った. 仔牛用空気駆動式ダイアフラム型人工心臓の流入側の人工弁固定リングの前後に蛇管を挿入し,人工弁の前後に先端圧測定用トランスデューサーをそれぞれ説置し,ドノバン型体外模擬循環回路を用いて,各種条件下における水撃現象により発生する弁前後の瞬間的な圧力変動を求め,次いでこれを差動増幅器を介して直接圧差を求め,ポリグラフに記録した. 蛇管の長さを変えることにより,弁閉鎖時に人工弁が移動しないもの(コントロール)と,5mm, 10mmの振幅で移動するような条件を設定し,駆動数100/分において, 駆動圧を150mmHg,175mmHg, 200mmHgにした時の収縮期比(%systole)の変化による弁前後の圧差の変化を測定した. 人工弁閉鎖時の弁前後の圧差の最大値は, %systoleにはあまり影響されず,弁の振幅が5mmのときはコントロール値の約80%,10mmのときは65%に減少した. 蛇管の伸縮による拍出量の低下は振幅5mmでは%systole 35, 40, 45, 50%において, それぞれ3, 3, 9, 13%であり,振幅10mmではそれぞれ3, 5, 9, 20%であった. 蛇管の伸縮による拍出量の低下に比べて,人工弁前後の圧差の減少の方が顕著であり, 人工弁固定リングの可動性が弁閉鎖時の水撃現象による異常高圧発生の緩和に効果があると考え, 固定リングに衝撃緩衝物質を用いて水撃緩和の実験を行っている.
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