研究概要 |
時間・距離・速度の関係概念の発達に関する基礎的研究は、時空速制御処理装置,同装置用パソコン,刺激制御装置インターフェスを、既有の時空速概念発達実験装置に接続することにより、能率が大巾に上った。横断的研究は、幼稚園児(年少,年長),小学1,2,3,4年生,大学生について実験を終え、あと小学5,6年生を加えれば、データーとして完壁となろう。縦断的研究は幼稚園児の段階を終えたところである。さらに、より複雑な関係概念の形成過程についても実験をはじめた。これらの研究結果の示唆するところは大変興味深く、およそ次のようである。1.時間と距離の比例関係の直観は、5才になったときにはほぼ出来上っており、その後一貫して強固である。2.距離と速度の比例関係の直観は、5才になったときほぼ出来上っているかにみえるが、6,7才のころに不安定になり、反比例関係のように把握するものがかなり出てくる。その後安定に向う。3.時間と速度は、はじめむしろ比例関係としてとらえられており、平均的には6才以降ゆっくりと反比例関係が成立する。ただし個人差は大きい。4.時間と速度の反比例関係を把握するまでは、基本的には3者関係ではなく2者関係でしか3つの慨念関係をとらえていない。さて、他方では、現行の文部省指導要領,算数・数学(中学校)ならびに理科で、これらの慨念がどのように取り扱われているか、どこに問題があるかを分析した。その結果1.まず算数でそれらの概念について学び、中学での理科につながるようになっているが、概念の考え方そのものに、算数と理科では基本的な違いがある。2.とくに5年生の算数における速さの導入の仕方は、子どもの持っている速さの直観となじみにくく、又3者の関係概念の成立をねらっていない。この年令ではそれは無理とみているようであるが、我々の基礎実験からすれば十分可能である。これらをふまえ新しい教材開発に現在取り組んでいる。
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