研究概要 |
(一), 近世初期風俗画は洛中洛外図にはじまる. 従来の風俗画が物語的・宗教的主題の添景であったのに対し, 洛中洛外図は, 街路を新しい生活空間として捉え, その群集描写に人生の諸相を表現して, 新たなる物語性を生み出した. そして人物の容貌・肢態・服飾に時代の好みを色濃く表出したのである. (二), 風俗画の構図の変遷. (イ) 天正〜慶長前半 洛中洛外図的な大観的構図. (ロ) 慶長後半〜元和 大観的構図から局地描写へ. さまざまな形で局地化がすすんで行く. (ハ) 寛永 屋内風俗画の発達 (三) 服飾表現の変化(画中に描かれた小袖文様に着目して) (イ) 天正〜慶長前半, 文様が小型, 単純. 肩裾(肩部・胴部・裾部と大きく三分され, 肩部と裾部の色もしくは文様が同一)も多いが, その文様も小型で単純. (ロ)慶長後半, 文様がやや大ぶりになり, 繁褥さ・派手さも加わる. 肩裾についても同じである. 更に横縞のモチーフが出現する. (ハ) 元和, 文様の大型化が顕著で, 大型の単独文様も出現し, 縦縞のモチーフも出現する. (ニ)寛永, 大型単独文様が盛行し, 斜めのモチーフが出現し, 大膽な分割処理がなされる. (四) 群像構成, (イ) 天正〜慶長前半期, 自然発生的・家族的(両親・子供・召使) (ロ) 慶長後半期, 家族グループの構成が複雑化・大規模化する. 女性グループ・男性グループが明確に出現する. (ハ) 元和期, 女性グループはかづきやひれをイキに着用し, グループ内の人間関係をきめこまやかに表現する. 男性グループは女性グループほど顕著ではないが, かなり遊活郎的気分が濃厚である. そして女性グループと男性グループの交渉も描かれる. (二) 寛永期 室内における男女の交渉を心理的な面でつっこんで表現する. そして個人中心の風俗画もあらわれる.
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