サッケード(飛躍眼球運動)の実行中に、視覚刺激を瞬間的に提示し、この視覚刺激に対する眼球運動反応を分析することによって、サッケードの生起のメカニズムの解明を試みた。4人の被験者から得られたデータを詳細に分析し、現在までに次の点が明らかになった。 1.サッケード中に瞬間提示された視覚刺激の位置は誤って知覚された。この誤りの大きさと方向は、視覚刺激がサッケードの実行中のどの時点で提示されたかによって決定されていた。サッケードの開始時に視覚刺激が提示されると、視覚刺激はサッケードと同じ方向に誤って定位された。一方、視覚刺激がサッケードの終了直前に提示されると、視覚刺激はサッケードと反対方向に誤って定位された。 2.サッケード中に瞬間提示された視覚刺激に対する眼球運動反応(サッケード)は、実際の視覚刺激の位置、すなわち物理的な位置ではなく、誤って知覚された、みかけの位置に対して生じることが示された。しかしながら、この眼球運動反応は、網膜上における視覚刺激の像の位置に完全に依存している訳でもなかった。 3、サッケードの実行中に視覚刺激が提示されることによって、このサッケードの大きさがわずかながら変化することが示された。この事実は、サッケードがバリスティクな特性ではないことを示唆している。
|