研究概要 |
色彩認知過程の階層構造を実験心理学的に解明することを目的としている。このためにまず、時間的・空間的に統制された色彩画像を自由に構成できる視覚刺激提示システムを作製した。すなわち、フレームメモリを用いることにより色彩画像の数量的記憶を可能にし、これをコンピュータで制御することによって、画像の時間的・空間的要因をプログラム可変とし、更に、画像の数量的解析を可能にした。 次に、本装置を用いて図-地刺激布置を持つ色彩刺激による色順応効果を色残像を指標として検討した。その結果、飽和度の異なる同一色相の刺激を図-地に布置すると、これによる色残像は補色残像とは逆の色えを生じること、及び、飽和度に依存することが明らかにされた。この種の色残像は、錐体過程,反対色過程とは異なる色処理過程の存在を示すものである。 更に、明暗弁別過程の時間特性を解明するために、正弦波格子パターンに対する時間周波数感度特性とパルス刺激の時間的寄せ集め特性を、順応輝度,空間周波数をパラメータとして測定した。その結果、2つの特性は、過渡的(transient)及び持続的(sustained)な応答特性を示す2種の線形要素と視覚系内のノイズによる確率加重効果を仮定することで相互に量的に関係づけられることが示された。 このほか、分光器色光刺激を用いて、網膜レベルでの時間特性を解明するために、色順応下での増分閾を刺激提示時間との関係を、空間要因・順応水準・波長をパラメータとして測定した。その結果、時間加重,空間加重,順応水準及び波長の間に相互依存関係が存在することが示された。これは、中・長波長錐体間の中心-周辺拮抗作用によるものと考えられる。
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