研究概要 |
道徳性および共感性に関する諸尺度は、欧米で開発されたものが多く、欧米の個人主義を背景にしていたので、本年度の研究では、日本の文化を背景とした独自の尺度を作成することに専念した。兵庫教育大学の院生の協力を得て、予備調査を行い、項目の選択に細心の注意を払い、子どもの発達に応じて言葉づかいを改める作業をした。いずれもワープロを利用して作業が進められ、最終的には印刷するようにした。 道徳性も共感性も、日本人の場合、対人関係の友好性・親密度および年齢が、欧米の子どもたちよりはるかに強く作用することがわかったので、尺度項目の内容を作成するに際し、それらの点を配慮した。これまでにわれわれが行ってきた研究および文献(海外,国内)を検討し、日本の子どもの道徳性および共感性は、親および教師からの教育による知識を基礎として、質問紙に回答するのではないかという仮定から、自立性変数を導入することに、自立性尺度が作成され、小学生および中学生に施行された。 昭和61年中は、道徳性,共感性,および自立性の各尺度の開発と、基礎統計量および各尺度の因子構造の分析が行われた。それらの結果は、国際行動発達学会(於東京)および、日本心理学会,日本教育心理学会で口頭発達することになっているし、道徳推理と共感性について得られた成果は裏面に記述されている国際誌にinvite paperとして発表することになっている。3学期になって得られた都会および地方の子どもたちの資料は、いま統計処理中であり、昭和62年度には、さらに資料を補足して、地域差の分析を行える準備しているところである。統計ソフトの開発,尺度採点のソフトの作成に努力が払われている。 性差については、中間報告の段階では、まだ明確な傾向がえられていない。
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