研究課題/領域番号 |
61510049
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研究機関 | 九州芸術工科大学 |
研究代表者 |
寺西 立年 九芸工大, 芸術工学部, 教授 (50038981)
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研究分担者 |
中島 祥好 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助手 (90127267)
津村 尚志 九州芸術工科大学, 芸術工学部, 助教授 (20038962)
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キーワード | シェパード・トーン / 無限音階 / 錯覚旋律 / 音の高さの知覚 / 複合音の高さの知覚 / 3和音による無限音階 / 音の相対的高さ / 音の動的高さ / 音の旋律的高さ / 聴覚モデル / 音の相対的高さ判断のモデル / 動的高さ判断のモデル |
研究概要 |
複合音のアンサンブルが相続いて提示されるとき、その提示順序によっては聞こえが一義的に定まらず、錯覚旋律を生ずることがある。この現象を説明できる聴覚機構として、動的な高さの知覚過程を表現するモデルを考えた。最初はシェパード・トーンと呼ばれる複合音セットの変形として、3和音とその2倍音および4倍音の合計9個の成分音から成る複合音を取り上げて、その聞こえについて調べた。複合音のスペクトル・パタンが対数周波軸上で周期性または概周期性をもつとき、成分音を一斉にシフトして行くと一周期のところで元のパタンと完全にまたは近似的に一致する。3和音の場合は完全に一致するまでに3回の近似的一致が見られ、完全周期に着目する被験者が1回の一致を見る迄の間に、概周期に着目する被験者は3回パタンが一致するのを感じている筈である。このことはアンサンブルからランダムに取り出された2音の高さを比較判断する実験結果から明らかである。にも拘らず順次にシフトした場合は、どちらの被験者もたゞ音が上昇(または下降)して聞こえ、両者間に差はない。この現象を手掛りとし、音の高さの上昇感下降感は直前の音のスペクトルパタンとの相互相関が手掛りに用いられていると考えた。実際にはその相互相関のパタンに窓掛け、べき乗、移動平均、國設定などの補正処理を施すモデルを想定し、相続く二音の上昇または下降感が生ずる確率を計算して実験で生ずる判断を予測した。この予測データとランダムに取り出された2音の一対比較実験データ、および順次にシフトした場合の反応データとが一致すれば、被験者の複合音の高さの動的高さ知覚旋律知覚の機構が解明されたことになる。現段階のモデルによる計算結果は被験者の反応結果にかなり近い所に来ているが、まだ種々の要因を考慮した補正を加える必要があると見られる。
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