事務的で魅力のある課題の遂行にも、ウルトラディアン・リズムの影響が表われるかを実験的に検討した。課題は言語情報処理に関して、ワープロ入力(邦文研究論文原稿の入力)を、空間情報処理に関しては、ファミコン(ゲーム名:ゼビウス)ゲームを採用した。 男子大学生及び大学院生20名を、ワープロ課題10名、ファミコン課題10名割付け、朝の8時から夕方の18時まで10時間、15分毎に5分間の課題遂行とその前後に各1分ずつ閉眼安静を課した。残る8分間は被験者は食事・用便・休憩・ジクソウゲーム等の自由行動が許された。実験期間は恒常環境室を閉鎖し、孤立条件で実施した。行動観察とともに脳波・眼球運動・心電図をポリグラフィ記録し、脳波については課題中とその前後の安静期について、1分間の記録をスペクトル分析し、脳波の左右差指数とコヒーレンスを計算した。ウルトラディアン周期変動成分の同定は、最大エントロピー法(MEM)によった。 ワープロ入力課題では、作業速度と誤りを指標として時系列分析した。成績曲線には'ゆらぎ'は認められるが、MEMスペクトルは平坦なパタンを示し、ランダム変動であることがわかった。しかし、原稿内容に自動変換で正しく入力できる部分と自動変換が誤りの発生因となる部分もあり、作業成績の適正評価という点に問題がある。従って、実務作業にはウルトラディアン変動はないと言い切るのは早計のようである。この点については、今後、指標の洗練化を試みる。ファミコンの成績は得点数とクリア場面数、使用機数を重み関数として時系列を作った。最も明確にMEMスペクトルにピークがみられたのは、単純なゲーム得点で約90分周期のウルトラディアン変動が認められた。脳波はゲーム中に右半球活性の状態を示しながらも、約100分周期の変動を示した。コヒーレンスに全く周期変動がみられないのは、単純作業と著しく異なる。
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