研究概要 |
強度弱視児3名(視力0.01〜0.08), 弱視児・者2名(視力0.1〜0.4)及び晴眼児(6歳, 8歳, 26名)と晴眼成人6名の協力を得て, 遠近の弁別, 距離の推定, 大きさと距離, 事物の属性抽出と距離などに関して実験は行われた. 1.遠近の相対弁別:(1)斜視を伴う弱視児の深径覚計による奥行弁別閾(Δd)は, 晴眼成人に比べ単眼, 両眼視いずれの条件下でも大きく, 遠距離で両眼による観察時に両者の差が顕著となる. 観察距離2mのとき, 晴眼成人のΔdは8mm未満だが, 弱視児では2〜6cmである. しかし, 実験の継続により弁別閥は若干低下する. (2)前方の床上に置いた2対象の奥行差が1cmのとき, 遠近弁別の可能な最大提示距離は弱視児では1mで, 晴眼の6歳児で1〜3m, 成人での7〜8mに比し, 近距離に限られている. が, 近方から次第にこの最大距離も拡大してくる. (3)各視方向における遠近弁別の精度は, 強度弱視児の場合, 前方向が最も容易で上方向, 下方向と続いた. 成人では3方向間の差が僅小か, 上方向が最も難しく前方向が比較的容易という結果で, 上下方向に関してはややくい違いが生じ, 吟味実験が必要である. 2.距離の推定:弱視児への実験で初回は過大視する者(KI)と過小視する者(KH)がいたが, 推定誤差は, +0.2〜-0.2及び+0.4〜-0.2の範囲で過大視傾向が強い. 又遠方での圧縮視も1名で現れている. 3.距離-大きさ関係:Gilinskyの定式に従って処理すると, 大きさが恒常に保たれる距離(σ)は大差ないが, 定数Aが, 強度弱視児で0.2〜4.5, 弱視児では1.5〜9.0, 晴眼児が15〜30, 晴眼成人が30であった(前方向の対象)が, 6歳児で視力両眼共に1.5以上ある場合には, 成人と殆ど差がない. 4.遠方の事物の識別:強度弱視児CNは, 通常の20cmからでは62%だが1mから140cmまで遠方では50%に低下. MTは遠方の事物には全体的な形状に注目し名称を列挙するが誤答案が続く.
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