32×32本の固定型ソレノイド素子をマトリックス状に配列した触覚刺激装置を用いて、大・中・小と大きさの異なる平仮名46文字を触読させた。盲人高校生5名は初め平仮名の文字名を表現できず苦労したが、触読はさすが速く正確で、晴眼者とは雲泥の差を示した。閉眼晴眼者に関しては幼年から老人まで6つの年令群それぞれに5名のデータを集め、正答率・触読時間・混同マトリックスについて分析を試みた。このうち、中・高・大の学生層は比較的成績が良かったが、年少児の場合には意欲を維持させること自体が困難であった。また壮年以上の年令層では個人差が大きく、全体に正答率・触読時間ともに顕著に劣るという特徴が認められた。また今後の触文字認知に役立てるため平仮名46文字間の混同されやすさをクラスター分析にかけて明らかにした。高齢者において触知覚の成績が劣るということは、病変による中途失明者の増加傾向が認められる今日、彼らの触知覚の困難を如何にして軽減するかについての基礎的研究の重要性をあらためて痛感させた。このような発達的変化の原因を更に明確にするためには、触覚的な感度の変化、時系列的な触刺激の統合や記憶像との照合過程に生ずる発達的変化などに関する精密な研究が必要とされる。そのための次年度の継続研究の準備として、素子間隔をずっと縮めた振動方式の触覚刺激素子を購入し、駆動部を独自に設計して、コンピュータ・コントロールのためのインターフェースを行い、現在ソフト開発に取り組んでいる。
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