研究概要 |
研究の初年度(61年度)は, 主としてCNV基礎研究として標準化の問題をとりあげた. CNVは種々なコンポーネントより出来ているが, それら各コンポーネントについては定量化する必要があった. 我々は種々な側面から定量化を試み, 標準的なデータを抽出することができた. 本年度(62年度)では, 非行群を設けて, 生理心理学的側面より, その特性について検討を加えた. 我々は既に注意欠損児(ADD)について検索してきたので, それとの比較を行うことを目的とした. 中枢反応であるCNVは, 非行群は正常群よりも小さく, また, 若干ながら注意欠損児よりも小さいことが明らかである. 統計分析の結果, 正常と非行, また正常と注意欠損群の間に有意差がみられた. 注意欠損児は, 脳の機能障害の中でも特に注意欠損が仮定されるが, 非行においても注意機能の低下との関連性が示唆される. 注意電位が非行と正常群間に差がなく, 行動指標である反応時間にも差がなかった. CNVが十分に生起しなかったことは, 注意の集中または持続が困難であることが示唆される. 非行群のパーソナリティ資質を反映するロールシャッハ得点と生理指標であるCNVとの間には, CNVが大きな者は正常人と近似する反応を示した. 少なくとも, この側面では生理反応と心理反応との対応が認められる. 本研究でとりあげた非行について, 生理心理学的研究がまだ端についたばかりである. 非行問題を生理心理学的に研究するためにはいくつかの問題がある. 大きな問題は非行の多様性であり, それが単一の生理指標(CNV)に反映するとは限らないことであろう. これまで, 非行は教育, 社会, 医学, 臨床心理学より検定されてきたが, 生理心理学的に検討する必要性があることが明らかとなった.
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