本年度は非言語情報の認知及び記憶をとりあげ、幾何図形を形成する要素となる特徴(feature)の認知と保持に及ぼす影響及び認知と保持の相互関連性について検討した。 実験【I】に於いては、Bruneri(1956)を参考にして長方形の枠の数、枠内の記号の数、種類、色を特徴群とした4特徴各3数値(velue)より成る図形群を作成した。プロジェクションタキストスコープを用いて刺激を視覚提示し、注目すべき特徴を指示した実験群とこの様な指示のない統制群における保持を測定し比較検討した結果、図形の認知及び保持が特徴のような複数のサブグループによって分析可能であることを示した。次に特定の特徴に注目させ認知を変えることによって生じる保持の変化を測定し、枠に注目させると全体の保持は減少し記号の数に注目させると全体の保持が向上するという様に特徴の種類によって認知の変化が保持に及ぼす影響が異なることを明らかにした。これらの結果は図形情報が特徴に基づいて複数に区分されて認知され、保持される可能性を示唆している。 実験【II】に於いてはこのような保持の容量が(1)1特徴内で保持し得る数値の限界(2)複数の特徴毎の数値を合計した限界(3)特徴の種類数の限界という3種の内のいずれによって規定されるかを明らかにする為Newmann(1977)を参考にして長方形内の横線の数と棒の長さを特徴群とした2特徴各6数値の図形群を作成しその保持を測定した。その結果図形全体の保持は実験【I】よりも実験【II】が優位であった。特徴内の数値の合計が同一であっても特徴の種類数の小さい実験【II】の方が再生が容易であるという結果は、幾何図形の複雑性もしくは認知及び保持に際しての困難度が、数値の種類数よりもむしろサブグループとなり得る特徴の種類数によって影響される可能性を示唆しているということが出来る。
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