本研究は、日本の権力構造をドムホフらのエリート論的な視角から経験的に解明しようとする試みである。このためにわれわれは、二つの調査を行った。一つは、第38回総選挙回の衆議院議員512名の経歴についての調査であり、今一つは、同議員を対象とした議員職へのアスピレーション形成過程と政治的諸アクターに関する評価を尋ねるためのアンケート調査である。後者は128名(25.0%)の有効回答を得ることができた。 この二つの調査の分析から、議員が各党ごとにみて、いくつかの経歴パターンをもつ集団に分類可能であること、しかもそれらが日本の権力エリートの一つである国会議員を補充するためのかなり閉鎖的なシステムであることが分った。議員は出身階層→学歴→職業と移動するプロセスで議員就位にとってより有効な資源となるようなキャリア形成に努めるが、最近回の選挙ごとに増加する世襲議員はきわめて閉鎖的なエリート補充システムであり、達成的なキャリアが無意味である点で特異な移動パターンをもつこともわかった。 議員へのアスピレーション形成には周囲の「重要な他者」が、モデルあるいはディファイナーとしての影響を及ぼすことが判明した。 また役割評価の点では、政党間に差違が見られ、自民党は政党優位論であり、野党は官僚優位論的であったが、総じて国会議員自身も日本の政策決定過程をエリート論的に考えていることが理解された。 本研究の詳しい内容については、「国会議員のキャリア形成と役割評価」と題する報告書を作成したので参照していただきたい。
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