研究概要 |
1.前年度, 富山県八尾町大長谷及び同県平村からの挙家離村者の追跡調査により, 彼らの生活の実態を究明した. その結果, 全体的には転出先の地域社会へ一応適応し, 不満や不安も少ないことが明らかになったが, 高齢者等を中心に不満や不安を感じている者も見出された. 本年度更に富山市内等の離村者聴取調査により, 高齢者等の中には先の調査で明るみに出なかった生活上の不満や不安が明らかになり, 特に大長谷の離村者に異質な生活への不適応によると思われる自殺の多発等の事態が存在することが判明した. 2.挙家離村は種々の要因に規定されていると思われる. 本年度の補足調査では, 主としてかっての地租名寄帳等の資料により, 離村激増前の大長谷の全世帯の土地(田・畑・山林等)の所有状況を調査し, 土地所有と離村との関連を究明しようと企図した. また, 平村では主として家の古さ, 特に本・分家と離村との関連を追究した. いずれも明確な関連を見出すことができなかったが, これらの関連についての一層詳細な分析検討が今後必要である. 3.岡山県富村では昭和30年と比べて60年の人口は約47%, 世帯数は約20%の減少で, しかも50歳以上の人口が半ばを越え, 老人のみの世帯が激増しており, 近い将来更に世帯数の激減が予想される. また, 昭和30年以来世帯流出は88戸, そのうち挙家離村として転出先を把握できた世帯は59戸で, 転出先は県内が半ばを越え, 次いで近畿が多い. かかる世帯及び世帯員を対象に離村の事情, 離村前の生活, 離村後の生活の実態や生活意識, 母村との関係等についてアンケート調査を実施した. 4.昭和61年法律改正以来挙家離村者を把握するために役場で戸籍附票等各種資料の閲覧ができなくなり, 当研究は極めて大きな困難に直面している. 当初予定の備中町等の挙家離村者の追跡調査も, 離村者の把握が進まないままに年度内は断念せざるをえなかった.
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