1.前年度の調査の補足調査は離村者に関する各種資料の閲覧、収集が困難であった岡山県内山村を断念して、富山県八尾町大長谷についての補足調査を中心に行なった。大長谷は県による「緑のむら」再生事業構想策定の指定を受けるなど、その後、地域の再生、活性化に取り組んでいるが、人工・世帯の流出は拡大し、住民の老齢化も進み、荒廃した農地は一層増加してきた。離村世帯の大半が大長谷に農地を保有しているが、耕作されぬまま放置され、山林も殆んど保有したままで、大規模な山林保有もかなり見られる。このような各世帯の農地・山林の保有状況の一層詳細な調査を行ない、離村との関係等を究明した。挙家離村も当初は農地等保有の少ない世帯に多いのが認められるが、挙家離村の拡大と共に農地等と無関係になったこともわかる。また、共有林野の実態の集落により大きく相違し、特に離村後の維持、管理等確定されていないものが多く、今後、大きな問題になると思われる。 2.昭和61年以来3年間の研究調査の結果を整理、分析、総括して、その研究成果報告書の作成が本年度の最大の課題である。法律改正等の事情により、当初予定した岡山県内での離村者の把握が困難で、従って、挙家離村者の調査を十分行なうことができなかったので、富山県八尾町大長谷、平村の調査を中心に、それらに隣接する利賀村についての57年の調査とも比較しながら、調査結果の整理、分析を試みた。また、挙家離村者を対象とするアンケート調査は多岐にわたる内容項目を含んでいるが、紙数の関係上、調査結果の全体を網羅することができず、その主要項目に限定して総括することとなった。大長谷、平、利賀の隣接三地区の挙家離村者には、転出先、離村理由、離村後の生活、母村との関係等に種々の相違も認められるが、離村時期や転出先の地域の相違など種々の観点からの一層詳細で総合的な分析と総括は他日々譲りたい。
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