本年度は、主として資料集収と面接・聞きとりをおこなったので、その分析は次年度に予定されており、結果はまだ出ていない。数次にわたる当該地域の人々との交流の結果、相互扶助組織の実態を明らかにすることが予測される資料(例:萱掛台帳・講中会議録・会計薄など)を入手できたのが最大の収穫である。これらの資料と聞きとりなどから、相互扶助組織について、以下のようなことが言えよう。 1.相互扶助組織は、地域によって、非常に異なる性格をもつ。 2.宗教的色彩をもつ組織は、その変遷過程において、先ず宗教色を薄め次に、儀礼的要素を減少し、次いで娯楽としての機能も他に代替されてゆく。 3.上記2の過程には、「生活改善運動」などのように行政に主導された運動の影響も大きい。 4.経済活動中心の相互扶助組織は、きわめて細部にいたるまで「互酬性」が尊重されており、それは世代をこえてまで「家」に記録保管されるため、途中での脱退は困難である。 5.「互酬性」は、異なる質のもの(たとえば、労働と物品など)の交換は認められないのが通例であったが、次第に様相を変えてきている。 前述のとおり、本年度は資料内容の分析にまで入っていないので上記は、ほんの粗描にすぎない。また、タテの組織である家関係と当該組織とのかかわりについては、全くふれていない。対象地域住民との接触の密度をあげて質的分析を試みる予定である。
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