本年度は本研究の最終年度であるため過去2年間の研究の整理とまとめを中心に行ってきた。 マニラ大都市圏における人口の郊外化現象と貧困層の分布とは密接な関係があり、それを規定している要因として工業立地と商業立地とが重要であるが、発展途上国においては商業立地との関係の方がより深いものであることが明らかになってきた。このような現象はバージェスの同心円理論とは異なり、発展途上国の都市における貧困層の分布は、推移地帯(Zoon of Transisiton)への集中ではなく、都市地域全域にわたって散在しているという状況である。 この点は先進工業国と発展途上国の都市化のパターンの違いが反映されたものだと考えられるであろう。すなわち、発展途上国の都市化は必ずしも工業化と結びつかずに進行しているため、工業の分布との相関関係が低くなっているのである。それに対して、マニラ大都市圏の貧困層の多くが就労するインフォーマル・セクターの職が得やすい商業地域では、貧困層もその周辺に集住するという形態が見られるのである。すなわち、商業地域が郊外に移るにつれて、貧困層もそれを追うようにして郊外へと集中するという現象がみられるのである。 このように貧困層の分布は、マニラ大都市圏の地域構造とひじょうに密接な関係にあることが明らかになった。
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