戦後急激に人口が都市に集中するのは世界的な現象であるが、発展途上国においてはこのような傾向が特に首位都市において著しいものである。その結果、雇用吸収力をはるかに超える人口が集中し、都市問題が発生している。 本研究の対象地域であるマニラ大都市圏も同様であり、スラムやスクオッターなどの都市貧困層が総人口の新1/3を占めるまでになってきている。 このような貧困層の分布は、マニラ大都市圏の地域構造と密接な関係があり、人口の郊外化に伴い貧困層の分布も郊外化の傾向を示している。これはアメリカの都市社会を分析したバージェスの同心円理論とは異なり、発展途上国の都市における貧困層の分布は、水位遅滞への集住ではなく、都市地域全域に分散することを示している。 この点は先進工業国と発展途上国の都市化のパターンの違いが反映されたものだと考えられるのであろう。すなわち、発展途上国の都市化は必ずしも工業化と結びついて進行していないために、工業立地との相関関係は低く、むしろインフォーマル・セクターの職を得やすい商業地域の立地と関係が深いと考えられるのである。商業立地が進むとそれに伴って貧困層もそこに集住機能していなかったという点も本研究で明らかになった。 今後はさらにこの研究を進める同時に、他の都市との比較研究も重要であろう。
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