本年度(一年目)は、すでに提出した「研究実施計画」に基づき、主に次のことについて研究活動を行った。 1)関系資料の収集-オーストリアの管庁関係資料の一部を除いては、概ね予定通り資料の収集ができた。資料収集については今後とも継続の予定。2)これらの資料に基づいて西ドイツ・オーストリアの教員養成、とくに教員試補制度を中心に考察を行ってきた。ただしオーストリアの教員試補制度については、未だ資料不十分のため、その詳細に至るまで解明しえなかったが、これらの(第一年目の)研究から、以下のことが明らかになった。 1.西ドイツでは、1960年代に今日のような2段階教員養成制度-大学における教員養成、試補研修機関における教員養成-が最終的に確立し、第2段階(州により1年半又は2年)では、第1段階におけるアカデミックな教育(学習)の基礎の上に実践的指導力の養成が企図されている。しかもこの国の教員試補制度は、人的(指導体制)と物的(施設・設備)の両面で整備されているため、教員養成の実があがっている。一方、オーストリアの教員養成は、形態上、ドイツ・ワイマール時代のそれに近く、教員試補制度はギムナジウム教員の場合にのみ適用されているが、試補研修の場は将来正式教員として勤務するギムナジウムであり、その期間は1年で、この間試補教員はその学校に勤務する指導教官の下で研修することになってる。 2.教員養成を西ドイツのように2段階で行うべきか否かについては、1970年代における西ドイツ教育改革においても論議され、一部の州の若干の大学では1段階教員養成の試行が行われてきているが、一般化されるには至っていない。 3.以上のほか、オーストリアにおける義務教育学校教員養成の実情についても解明しつつある。
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