研究概要 |
本研究は、精神薄弱児の身体運動機能のうち、特に身体運動操作の統合能力に最も重要であるといわれている身体運動協応性に注目し、それがどのように評価できるものか、神経心理学的側面から分析し、新たにそのための評価バッテリーを作成することを主なねらいとしたものである。本年度は、まずわが国でのこの種の検査がどのようなものであるかを調査した。その結果、特に精神薄弱児のために作成された検査法のないことが確認された。そこで諸外国の資料が調査され、その中でアメリカのFrostig,MのMSTB(Move-ment skills Test Battery)を利用することになり、その方法に準じて測定項目づくり(12検査項目)が行なわれた。これにより精神薄弱養護学校の児童生徒(約70名)を対象に、その実態が調査され、統計分析等の結果、この項目(バッテリー)を応用活用することで、中度の精神薄弱児に利用できることがあげられた。一方、西ドイツのKiphard.E.Jらにより作成されたKKT(K【o!¨】rper Koordinations Test fur Kinder)の文献を入手し、それを利用したテスト項目の開発に着手した。まず、健常児や精神薄弱児を通して、何回かの観察中の経過で、検査用具(器具)を製作し、ほぼバッテリーの方向が決った段階で、本格的な標準化のための手続きに入り、保育園児と小学生児童およそ780人を対象に実験が開始された。そのテストバッテリーは、動的バランス,力動的エネルギー,スビードという身体協応因子を含む以下の項目である。(1)後方バランス歩き(幅6cm,4.5cm,3cmの3種類の板の利用)、(2)横跳び(15秒間に両足をつけたまま何回往復横跳びができるか)、(3)横移動(20秒間に次々と板に乗り移る回数)の3項目について、すでに統計分析はほぼ完了し、現在精神薄弱児養護学校で、その妥当性等の評価のために、臨床実験を通して継続中である。試作の評価バッテリーで、さらに実証的な発達機能分析を進めたい。
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