研究概要 |
本研究は, 精神遅滞児の身体運動機能の内, 特に身体運動操作の総合能力に最も重要であると言われている身体協応性に注目し, それがどのように評価できるものか, 神経心理学的側面から分析し, 新たにそのための評価バッテリーを作成し, その活用について検討することをねらいとした. 西ドイツのKiphidらにより作成されたKTK;BCT(The Body Coordination Test)から3項目を選び, 健常児(6歳〜12歳)における標準化, MQ表作成が完了し, なおかつ精神遅滞児用のMQ表までが完成した. そのテストバッテリーは, 動的バランス, 力学的エネルギー, スピードという身体協応因子を含む以下の3項目である. (1)後3歩き, (2)横跳び, (3)横移動である. そして二の結果から健常児における日独比較がおこなわれ, Tesk1の10歳を除き全ての項目, 年齢において日本の児童の方が有意な差をもって優れていることがわかった. なお, Frostig.MのMSTB(Movement Skills Tost Battery)と合わせて, 2地域の精神薄弱養護学校で, その妥当性等の評価のために, 半年から一年に渡る臨床実験を継続した. 追跡結果では, 小・中・高等部とも有意差はみられなかった. この結果はKiphardらの示すところと同じく本検査が神経学的な検査項目として妥当であることがわかった. また, A養護学校では, スキルテストであるところのMSTBの中から手の動きを中心とした協応性の検査項目において, 小・中・高等部とも, BCT同様に有意差はみられなかった. 他のいくつかの項目においては有意な差をもって発達の変化がみられた. B養護学校では, 積極的なムーブメント活動プログラムにより, 手の動きを中心ととした協応性の検査に, 顕著な成果をみるに至った. これはMSTBがスキルテストであり, 本校の生徒の開発されていないムーブメント能力が新しい経験やムーブメント活動で変化しうるところの機能であることを示す興味ある結果と言えよう.
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