3歳以下の乳幼児について、登園時での母子分離による(直後)不安反応や保育園への適応状態などについて定期的に観察を続け、分離不安や保育園への適応状態の程度を測定するための尺度の検討を行なった。同時に、主たる養育者である母親に、養育態度や学歴などについての質問紙調査を行なうことによって、子どもの不安反応や適応状態との相互作用を分析し、以下の知見を得た。 1.登園時に母親と別れる際の分離不安反応は、やはり1歳代の子どもで最も強く、その後、年齢の経過とともに減少していく。0歳代にはほとんど起こらない。不安反応は入園後1か月項までに急激に減少していくが、3か月を経ても減少しない子どもの場合には母子関係に問題があり、母と子との愛着関係が成立していないか希薄な場合に見られるようである。母が子どもを非常に溺愛している場合は、分離不安反応が発達的にはより早く現われる。その意味で、分離不安反応がいつ項強く現われるかは、母子関係の絆がどれ程早くしかも強く形成されているかによると言える。 2.保育園への適応過程は、分離不安反応の生起程度と負の相関を示すようである。つまり、分離不安反応が薄くなるにつれて、子どもの朝の機嫌もよく、保育園への適応状態も次第によくなってくると言える。 3.0歳代の入園児に分離不安反応がほとんど現われないのは、認知能力がまだそこまで発達していないと判断されるが、それと同時に、0歳児の知的能力の柔軟性も予想された。つまり、母子関係と保育園側での対応がしっかりしていれば、0歳児は複数のコミュニケーション能力を別々に発達させていく可能性がある。それ故、特に言語面での能力が促進されるのではないかとの印象を受けた。今後は、この面での可能性も理論的に検討し、また、実証していきたいと思っている。
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