研究概要 |
本研究は、フレネの教育において中心的位置を占める自由表現(expression libre)と学習の個性化(travail individualis【e!´】)との関連を明らかにすることを目的としている。この前提作業として、travail individualis【e!´】を、フレネの著論に即して従来使用されてきた「学習の個別化」ではなく「学習の個性化」を使用したが、現時点では仮説的に「学習の個人化,個人学習」という概念の導入を検討している。フレネ教育論が労働概念を基礎に立論されており、travail individualis【e!´】も、分業と協業を意識して使用されているからである。しかし、主にフレネ夫人が提起した自由デッサンの側面からは「個性化」というにふさわしい内容もあり、引き続き検討する。 学習文庫(教材)間の系統性の分析については、小学校低〜中学年用に開発された教材を翻訳し、他の学習文庫への参考指定関係をもとに行った。その結果、当教材が第一次世界大戦を扱ったものであり、指定も同大戦の学習文庫に限られ、第二次世界大戦のものは含まれていない。子どもの興味を出発点としながらも、短絡的な指定はせず、厳密な科学的(この場合は歴史的)系統性が確保されており、他の分野での指定の系統性との比較が必要となった。(1987年2月28日フレネ研究会で研究発表の予定) 表現は生活の有りようや内発的パッション抜きには考えられない。フレネ教育における美術表現は、この根幹の上に成り立ち、一人ひとりの子どもが日々感じ、思いつくことの自由表現である。したがってその中身は、個人的生活感情や生活づくりのなかでの意欲的な造形表現、つまり極めて個性的色彩を帯びる。具体的にみれば、「絵日記」や「生活デザイン」的性格が大事にされているといえよう。
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