研究概要 |
近年、障害幼児の通所施設や養護学級に在籍する児童生徒の中には、はなしことばのもたない者が多くみられ、それらの児童生徒に対する訓練や生活指導が障害児教育の一課題となっている。こうした障害に対する指導の手がかりを見出すためには、言語を含めたより広いコミュニケーション活動についての研究が必要である。本研究では、言語活動を、狭義の発語発声あるいは言語理解だけにおかないで、言語活動を支える運動,行為,表現活動,社会性にまで広めて研究を進めた。 方法としては、はなしことばをまだ持たない健常乳幼児と言語を欠く障害児において、はなしことば以外の言語活動がどの様にコミュニケーション手段として利用されているかを、養育者からのアンケート調査および種々の観察場面において観察し、言語活動の基礎となる行動に何があるかを分析した。 対象児は月齢12から24カ月の健常乳児総計10名および精神年齢6から36カ月の精神発達遅滞児約20名である。対象児は、それぞれ保育所および障害幼児通所施設において、自由遊びの場面,食事の場面,設定保育の場面でのそれぞれの対象児の行動,相互の交渉,大人との交渉をビデオ録画し、分析した。また、より年長の障害児(主として言語に重篤な障害を持つ暦年齢5歳から12歳精の神発達遅滞児)で、微細運動,身体図式,空間観念の発達等について発達神経心理学的検査を行い、言語障害児での言語外症状を明らかにした。 現在、狭義の言語以外のコミュニケーション手段としては、身振り,うなずき(肯定),いやいや(否定,拒否),指さし,クレーン,物を提示,接近,表情,視線等が観察から抽出されている。今後は、これらを発達神経心理学検査結果と対照させながら、コミュニケーションの基盤となる行動についてチェックリストを作成したい。
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