研究概要 |
1)調整の実施-工法の近代化・規格化に対応する後継者育成のパターンの変化と地域的差異を見るため, 昨年度に引続き, 立杭焼, 信楽焼, 益子焼, 小石原焼および小鹿田焼の各窯場の陶工若干名を対象とする徒弟修業経験に関する面接調査を実施する一方, 陶磁器の大規模生産地として知られる佐賀県有田町, 愛知県瀬戸市, 同常滑市, 岐阜県多治見市, 同土岐市, 及び京都市東山区の各地に所在する組織的な陶工養成(陶工職業訓練校, 窯業職業訓練校, 窯業大学校, 窯業試験場陶工研修課程, 陶芸研修所等)の実態についての調査を行ない, 伝統的な徒弟制教育と近代的を組織的教育との比較を試みた. 2)調査の結果-(1)大都会に近く, 磁器類の生産高が拡大している大規模の産地では徒弟慣行は減退の一途をたどっており, そうした地域では, 各種技能の習得を窯業職業訓練校等の定型化された職業教育にゆだねる傾向が顕著になっている. そうした学校の中には専門学校レベルの専修学校も出現している. (2)今日の陶磁器製造では, 製品の種類および製法の多様化・高度化が著しく, 窯業の職業訓練校等の発達はそうした実態に対応した陶工教育の分化を示すもので, したがって, 学校による技能訓練と徒弟制によるそれとは本質的に異なる教育の「構造」をもつが, しかし, それにもかかわらず実際に展開する教育の「過程」に関しては, 両者の間に基本的に共通する点が認められる. (3)そうした定型的教育機関における陶工教育は, 成型・釉薬・絵付け・焼成等の各技能に分かれてなされるため, 陶工精製から焼成まで一貫した作業を要求する民陶の窯で働くには, 見習い工的な身分で習練を重ね, 数年後に漸く「一人前」の陶工として認められるという場合が多い. 逆に窯元から釉薬やデザインの研究のため熟練した陶工が学校に通う場合もあり, 両者は相互補完的な関係にある.
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