研究概要 |
「教育行政の住民統制」の理念が, 市町村教育委員会の実際の運営の中でどのように機能しているかを解明する研究の一環として, 制度上「住民代表」としての職責を担う教育委員の職務遂行行動にかかわる条件の分析を試みた. すなわち, 教育委員のもつさまざまの特性のうち, どのような特性が活発な職務遂行を促進し, どのような特性がそれを制約するのか, つまり, 活発(あるいは不活発)な職務遂行と結びついている特性は何か, という観点から, 教育委員の職務遂行行動を規定する要因分析を行なった. そのねらいは, 委員として活発な活動を展開する委員とそうでない委員とを識別する特性を明らかにし, いわゆる「委員の人選の見直し」のための経験的資料を提供することである. 職務遂行行動を規定するとみなされる説明要因として, (1)個人的属性, (2)リクルート特性, (3)社会的心理的性格, (4)職務意識, (5)情報行動, (6)教育委員会の集団的特性, (7)地域特性, の7つの要因群を取り上げた. 方法は, 活発な職務遂行のグループとそうでないグループに分け, これを外的基準として, 林の数量化II類に基づく多変量解析を行なった. 解析の結果をもとに, 活発な教育委員のプロフィールを「理念型」的にえがくと, つぎのような委員像となる. (1)経営(行政)手腕を認められて選出され, (2)教育・教育行政上の問題解決への明確な課題意識をもって委員に就任し, (3)地域住民の期待を肌で感じつつ, (4)地域の実情に基いて決定されるべき教育の外的事項に関心が高く, また, (5)地域住民との交流関係において期待される役割を重視し, (6)情報源を委員会外部にも求め, 問題を自発的に堀り起こすような積極性を備えていて, しかも(7)「会議が異議なく進行する」ようなことのない「合議制の執行機関」としての使命感にみちた委員会に属する委員である. このような委員は現実にはいない. これは, 活発な職務遂行を行なう委員の特性を示唆する.
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