本研究は資料調査および資料の複写収集を基盤とするものである。調査・収集については下記の事情によりさほど進展しなかったが、具体的な研究発表を通して、本研究の対象とする資料群についての見通しを得ることができた。 調査収集に関しては、本年度は、本研究の対象資料中、最も大部のものと考えられる国会図書館蔵『盲人諸書類』全七冊の複写収集そして大東急記念文庫蔵『當道泌訣』筆写を重点目標に定めた。しかし両機関ともに改装等による長期休館があり、国会本の複写は入手し得たものの、大東急記念文庫本は日程の都合がつかず来年度へ見送りとせざるを得なかった。その他は、過去に収集した資料について現物との照合確認を主とした調査を行なったが、朱墨の判別、錯簡の有無等意義深いものであったと思う。 研究発表の方では、中世・近世の平曲の伝承の問題について、ごく主要な書目に紋ったものながら、見通しを提示することができた。 『當道要集』(または『當道要抄』)についての善本を紹介することができたが、その他の書目に関して言えば、『當道拾要録』(または『當道祖神録』)は藝能神信仰との関連、また所謂「河原巻物」などを含めての視野から考察すべきことを考えており、『古式目』の解明は『當道新式目』や『當道大記録』との関連によって行うべきであることに思い至っている。
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