研究概要 |
当研究は、英語母音発音指導の一つの側面として、英語母音の長さという観点から日本人学習者とnativeとの発音の違いを客観的に明らかにすることを目的としている。研究成果は次の通りである。 1.研究方法 1).発音素材=母音および二重母音計16個について、CVCCV,VCという音声環境に立つ単語を選んだ。Cは無声閉鎖音〔p〕または〔k〕としたが、後の子音として閉鎖音以外についても見るため摩擦音〔s〕も用いた。2).発音者=日本人学習者とnative各数名。日本人は良い発音の代表者と良くない発音の代表者を選んだ。3).収録方法=単語一個ずつカードに書き数十個一組とし、順序を変えた数組を発音して貰い収録した。4).音響分析とその処理=収録した発音材料をAD変換し、コンピュータによって波形をとった。波形を子音部、母音部、無音部にわけ、定規によって測定、平均を出し長さを時間に換算した。鼻音やその他の有声音の前の母音については、スペクトログラフをとり、フォルマントの変化を見た。 2.分析結果=上記の英語単語の母音部、無音部の長さの平均値を日本人とnative別々にグラフにした。そこから次のことが明らかになった。1).いわゆる短母音を含む単語も、長母音または二重母音を含む単語も、単語、全体の長さでは日本人とnativeで余り差がない。2).母音部に限ってみると、日本人では長母音や二重母音、また母音+rが短母音より長い。3).母音〔 〕はnativeでは最も長い母音であるが日本人では短い。4).日本人学習者の発音では、後ろに閉鎖音が来る場合、いわゆる短母音の後に長い無音部があるが、それは促音の影響とみられる。5).日本人の発音では鼻音の前で撥音の影響が見られる。6).日本人発音する母音の長さは後が有声、無声に関係ない。7).二重母音では、前の母音から後の母音への移行の仕方が日本人とnativeとでは違う。
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