『法学提要ギリシャ語義解』は、従来は一般には、ユースティーニアーヌス帝『法学提要』の単なる翻訳にすぎないものとして法資料として低い評価しか与えられていなかったが、『義解』の中には、例えば、不法行為に関するアクィーリウス法成立時期推測の重要な伝承(4巻3節15法文)をはじめとして、他の史料には伝えられていないものが含まれており、古典法研究にとって重要であることが再確認されると共に、ビザンツ帝国におけるローマ法ラテン語法源のギリシャ語への一連の訳出作業の冒頭に位置し、しかもユ帝法の典編纂に携ったテオフィリウス自身の作と伝えられることから、当時の法理解と訳出作業のあり方を具体的に示すものとして極めて貴重なものと考えねばならない。今後の膨大なビザンツ法源の電算機処理が可能になるような、ギリシャ語ラテン語混在のビザンツ法源研究のための電算機プログラムを作成し、今年度においては、第一巻の入力を行い、来年度残余の入力を行って綜合的分析を行いうる基礎を築いた。なお、その際あわせて、いくつかの代表的写本を接合することにより、今日まで一般に用いられるフェッリーニ版(1884/97)およびこれを基礎とするゼボス版(1931)は、それぞれなお検討を要すものと思われるに至り、将来新たな刊本を作成することが不可欠と思われ、当分はライツ版(1751)を参照にしつつ慎重に扱うことを要する。〈以上の詳細は、近く、「法学提要ギリシャ語義解研究」として「法政研究」に公表の予定である〉。
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