研究概要 |
本研究は、1981年から82年にかけての冬学期に、西ドイツ・ミュンヘン大学のアルトゥール・カウフマン(Arthur Kaufmann)教授のもとで行われた「ナチズムにおける法哲学」と題する法哲学ゼミナールに提出された29本の「レポート」の分析研究、およびそこで扱われている第一次資料の収集分析研究である。 本年度は研究初年度であったので、私の従来からの研究と直接的につながる諸問題を中心に研究することになった。上掲「レポート」の中では、特に「ナチズムの法律観」,「ナチズムにおける自然法」,「全体国家」,「法哲学における相対主義」等のレポートを読み、そこで用いられている第一次資料の整理点検を試みた。また研究領域が法哲学・法思想の領域なので、一般的なファシズム研究の領域にも手を広げることを余儀なくされた。本年度の研究実績としては以下のことが報告できよう。 1.従来からの研究の継続で、ワイマール憲法を指導理念としたワイマールデモクラシーが何故ナチズムに敗北していかざるをえなかったのか、それを歴史的背景とワイマールデモクラシー(特にケルゼン・ラートブルフのそれ)の理論的方法の欠陥(デモクラシーの相対主義による正当化)という点で明らかにした。 2.戦後の西ドイツがナチズムの「遺産」の克服をどのように行ったか、それは戦後日本の戦争責任をどのように照射するかについて論じた。 3.関西大学と同志社大学のチームによる法理論研究会の「法,法哲学とナチズム」(ARSP,Beiheff Nr.18)の翻訳に参加し、ここでの共同研究によって大きな刺激をうけた。
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