研究概要 |
西ドイツ・ミュンヘン大学のArthur Kaufmann教授の法哲学ゼミナールに提出された29本のレポート戸その一次試料の収集, 分析を課題として研究をすすめてきた. これまでその研究成果の一部を, 一つは「両大戦間の思想-試練のワイマールデモクラシー」として, 二つは「戦後思想の空隙-苦痛のErinnerungsarbeitが不可避であること」として戦後西ドイツにおける負の遺産の克服の歩みと対比して戦後日本の戦争責任論について論及した. 他方, 関西大学法理論研究会に参加して『法, 法哲学とナチズム』(ARSP,Beiheft Nr,18)の翻訳刊行を共同して行った. しかし, 今改めて, 「ナチズムにおける法哲学」の研究対象領域は極めて深遠広大であり, これをひとつのトータルな研究成果としてまとめあげることは, わずか二年の研究期間と筆者個人のみの能力をもってしてはいかんともしがたいことを実感している. そこで, 先の法理論研究会が新たに, 昭和62〜63年の期間, 竹下賢教授を代表者とするプロジェクト「ナチス実定法秩序の総合的研究」として再発足し, 筆者も引き続きそのメムバーに加わっているので, この共同研究に参加するなかで研究成果のとりまとめに向けてさらに研究を続行したいと考える. また, 1988年度日本法哲学会学術大会(11月中旬, 明治学院大学)において, 「ナチ・レジームにおける法体系の変動」について報告する機会を与えられたのでその準備作業を含めて研究成果のとりまとめのため努力したいと考えている.
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