ミュンヘン大学のアルトゥール・カウフマン教授は、1981〜1982年の冬学期に「ナチズムにおける法哲学」というテーマの法哲学基礎ゼミナールを担当した。そこには29本のレポートが提出された。それらのレポート及びそれが依拠した第一次資料の研究・収集が私の研究課題であった。 29本のレポートは大まかに分類すれば以下の4領域に分けられる。 1.ナチズムは伝統的な法哲学の諸潮流といかに対決してそれを否定していったかをとりあげたもの。R2.新カント派と価値哲学、R6.利益法学、R7.目的論的概念構成。 2.ナチズム特有の法哲学ないし法思想をとりあげたもの。R1.法律観、R3.人種法理論、R4.自然法、R5.ヘーゲル主義、R8.カール・シュミットと具体的秩序思想、R9.具体的一普遍概念、R10.憲法論、R20.法源論、R19.市民法理論Biirgerliche Rechfstheorie、R11.権威主義国家と全体国家。 3.ナチズム下における具体的な法実践あるいは実定法の解釈・適用の領域における具体的な法的思考の変容・展開をとりあげたもの。R12.権威主義刑法、R13.犯罪論、R26.刑法解釈、R14.法的人格概念、R17.権利能力概念、R18.婚姻と家族、R21.裁判官の独立、R22.裁判官の法律拒絶、R24.主観的法の理論、R25.公共の福祉論、R28.一般条項の機能、R16.法実証主義。 4.戦前・戦後におけるナチズム法哲学との対決をとりあげたもの。R15.戦後におけるナチズムとの対決、R23.戦前におけるラートブルフによるナチズム批判、R29.東ドイツにおけるナチズムとの対決。 報告書には以下のレポートのレジュメと文献一覧を載せている。私自身のトータルな研究のまとめは今後の課題として残っている。
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