研究概要 |
(1)昭和61年度から統計行政関係の法律および政省令を整理しているが、その中で指定統計が個人情報保護については当面するデータ保護の観点からしても十分応えうるものであることが判明した。これに対し、統計法上の届出統計、統計報告調整法上の承認統計については守秘義務が存在せず、また調査票の目的外使用についても何ら規制が行われていないため、何らかの法的規制が必要である。 (2)統計法上の守秘義務については統計調査上知り得たすべての事項について及ぶというのが、政府の有権解釈である。しかし公務員の守秘義務は実質的に秘密に価するものでなければならないとするのが、外務省機密漏えい事件に関する最高裁の判例であり、統計法上の守秘義務よりは相当狭く解している。この両者をどのように調和していくかは今後の課題であるが、予定されている個人情報保護法における個人情報保護義務との関連も考慮して今後検討する必要がある。 (3)諸外国との比較では、西ドイツ,アメリカ,イギリス等の資料を収集し検討しているが、これらの国ではデータ保護法を有し、また統計調査の体系も異にしているため、比較の視点を考慮する必要がある。 (4)政策過程のうち、統計調査の占める位置はたんに社会の実態的構造を明らかにして政府や国民に情報提供をするのみでなく、個々の法令の中に制度としてビルト・インされていく傾向にある。統計調査の適正さの要講はこうして、その手続過程、申告者の権利義務が政策過程での公益性の実現のために重要な要素となってきている。
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