1.アメリカ合衆国におけるアファーマティヴ・アクションの運用実態につき、合衆国で発刊された資料・文献を中心として調査・整理した。また、合衆国と同様の政策を導入しようとしているオーストラリアの実例についても、一定の検討を行った。この結果、合衆国では、特に女性の雇用差別解消において、この政策が一定の役割を果たしていることが確認された。しかし、同時に、黒人の差別の解消については、これまであまり効果があがっていないことも明らかとなったが、その理由についても検討を加えた。また、この政策が全面的に導入されるに従って、レーガン大統領をはじめとしてこの政策に対する「逆差別」の非難が高まっていることも注目されたが、その一般的理由、法的理由を整理した。しかし、連邦最高裁判所は、八○年代になっての諸判決で、原則的にこの政策を合憲としていることも注目された。 2.日本における差別、特に被差別部落、アイヌ民族、女性に対する現在の差別実態を、最新の資料や差別を受けている人たちからの聞きとりによって調査、整理した。共通の問題として、特に雇用差別・教育差別が今日の重要問題であることがあらためて明らかとなったが、それだけにアファーマティヴ・アクションを日本に導入することに、一定の意味があるのではないかということが確認された。しかし、部落差別については、差別理由の固有の問題から、この政策をただちに導入していくことについては、疑問点があることも明確になった。しかし、逆に、、女性差別については、今後かなり有効な差別解消策になりそうであることも明らかになった。また、この政策を導入することが、日本国憲法と矛盾しないことも明確となった。 なお、検討にあたっては、「部落解放基本法」構想との関連も考慮され、総合的に検討された。
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