研究概要 |
1980年代はわが国においても、欧米先進工業国においても、著しくME化が進んだといえる。この間、第二次産業では極端な省力化をともなうME化(広い意味で用いる。ロボット導入をも含むものとする。)が進み、雇用吸収力は折柄の構造不況産業もあって激減する。他方、第三次産業においてもME化が進む結果、新たな基幹労働力が不足しつつも、全体としては、雇用吸収力を減じ、フルタイム労働者の減少とパートタイム労働者の増加となっている。本研究では、今年度、西ドイツを中心とするヨーロッパ諸国のME化の雇用、労使関係に与えた影響に関する法的データを蒐集整理し、わが国との関係で比較分析を行った。また、自動車,鉄鋼,電機,流通などのこの問題に関する実態の調査,資料蒐集を行なうことを実施した。その結果、 1.雇用不安、雇用情勢の悪化と一般的にされているものは、産業間でスムーズに労働力の移転がなされなかったことに根拠があること。その調整のため、ヨーロッパでは解雇,希望退職,剰員整理を行なっているのに対し、わが国では出向、配転などを軸に調整が行われた。 2.一見このような調整のし方の差から、わが国の方が雇用保障が厚いように思われるが、最近ではむしろ、第二次産業の従来の基幹労働力はどの産業も過剰となり、日本的雇用調整に限界をもたらしている。 3.その意味では、欧米では、早期引退、ジョブシェアリング・パートタイム雇用の充実が積極的になされ、高失業に対応してきていること、また横断的労働市場の結果スムーズに移動がなされることが指摘できる。 以上の実態分析を前提に、西ドイツ就業促進法・早期退職法を中心とするヨーロッパの法的変化をわが国の最近の労働基準法改正,労働者派遣法,高齢者雇用安定法などによる法的変化との関連で比較検討を行い、あるいは行いつつある。
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