研究概要 |
1960年代以降のアメリカの政治・外交に関する研究にできるかぎり広く目を通すことに努めるとともに、レーガン政権の支持基盤、新保守主義の対外政策観についてとくに研究し、いずれについても一応のまとめを行なった(裏面論文欄1,2を参照)。また上記の研究によって得られた知見をアメリカ史全般についての議論や日米関係の研究にも利用し、それぞれ著書・論文にまとめた(裏面論文4,著書1,2を参照)。現在は人口動態の変化(国内人口移動と移民の流入)の政治的意味について研究中である。(5月の日本国際政治学会春季研究大会で発表の予定)。 レーガン政権の支持基盤について。レーガン政権が教条的保守勢力の支持をうけており、人事や政策に関して、その勢力の意向に配慮しなければならないことは事実である。しかし、政権はそれだけに依存しているわけではなく、共和党本来の主流である穏健保守勢力の支持にも依存しており、対外政策に関しては、後者の影響力が強い。対外政策の決定に参画する主要な地位は穏健保守派によって占められており、基本的な対外政策は彼らの意向を反映するものであった。教条的保守派は人材難という事情もあり、対外政策にかかわる重要な地位には人材を送りこめなかったことも彼らの影響力を弱めた。 新保守主義の対外政策観について。新保守主義者の対外政策観を知るには「コメンタリー」や「ナショナル・インタレスト」のような雑誌を参照することが必要であるが、彼らは冷戦時代の対外政策観を引き継いでいるために、反共意識が強く、対ソ封じこめが優先課題とされている。そのため中国に対する態度は冷淡であり、東アジア情勢への関心は低い。また国際経済問題への関心も低く、日米経済摩擦のような問題についても、従来は関心が低かった。
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