研究概要 |
本研究プロジェクトでは, 企業の投資に関する経済分析をテーマとして, 研究を進めた. 研究をスタートさせるにあたっての研究代表者および2名の研究分担者の共通の認識は, 戦後の日本企業と欧米企業の投資ビヘイビアにはかなり本質的な差異が存在するというものであった. その差が何であり, またそれが彼我の経済システムのいかなる相違に起因するのかを解明してみたいという関心が, 3名をこの共同プロジェクトに結び付けた因縁であった. われわれは, 相互のディスカッションの過程で, 第1の疑問に対する答えを次の4点に集約してみることにした. それらは, [1]日本企業は欧米企業に比べて投資ホライゾンが長い, [2]市場占有度の拡大ないしは高成長への志向が強い, [3]利益率, 株価志向が弱い, [4]リスク許容度が低い, ということである. 伊藤は, 政府の産業政策のおり方および企業間の取引慣行から[1], [2]を説明した. 小林は, 終身雇用, 年功賃金という日本企業の雇用慣行から[2], [3]を, また, 市場の「コンテスタビリティ」という観点から[4]を説明した. また, 西村は, 金融システムのあり方と[3], [4]の関連について, 理論的モデルを構成して分析を試みた. また, 伊藤, 小林は, 日本の自動車産業を対象として, ヒアリングやデータ分析によって, いくつかの仮説の検証を試みた. (この研究は, 他の研究プロジェクトの成果として出版される予定である. ) 幸い, 本研究参加者は3名とも同じ学部に所属しており, 日常のディスカッションやいくつかの学部セミナーでの報告が, 研究を深化させる上で大きな役割を果たした. このような研究機会を与えていただいたことに感謝致します.
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